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天使大学大学院で未来の助産師さんに取り組む産後ケアの講義「すべての家族に産後ケア」の意味と意義

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先週末、天使大学大学院助産研究科2年の学生さんを対象に、「『すべての家族に産後ケア』の意味と意義」と題した、90分の講義を担当しました。

 

 

  

助産師をめざす学生さんへの講義も、続けてご依頼いただいて早や4年目。

昨年まではコロナ禍のためオンライン教室の体験受講と、対面での講義でしたが、今年は 産後ケア札幌教室 9月コースにも直接実習参加いただくことができました。

(産後女性とその赤ちゃんたちと一緒に産後ケアプログラムに取り組む学生さんたち)

 

以前、産後ケア教室参加者で助産師さんがいらして、彼女から、

「助産師が知るのは“出産するまで”の妊婦さんの時期と、産後1週間ほど、そして産後1ヶ月健診まで…と、実は期間限定。だから、自分が実際に出産を経験するまで、その産後1ヶ月健診後からの子育て期を、母になった女性がどんな風に過ごし、何に戸惑い悩むのか?までは、全く知らなかったんです」

そうお聞きしたのが忘れられません。

なぜ心に残ったか?というと、周産期医療に携わる専門家も、子育て支援者も、そして私たちのような産後を専門とした市民活動の支援者も、それぞれに受益者と直接関わる現場も時期も“ 限定”されていることを、助産師さんの生の言葉により気付かされたからです。

 

妊娠から子育てまでトータルでずっと支援できる人は、どこにもいないのだと、痛感させられたのです。

 

だからこそ、さまざまなセクターがそれぞれの強みを発揮するだけでなく、互いを知るためにそれぞれの活動範囲から越境して出会ったり、そこで情報共有や連携しながら、ともに妊娠期〜産後・子育て期を支援していく必要性をずっと感じています。

そんな越境や連携の必要性を感じるからこそ、こうして未来の助産師さんへ、産褥入院を経て自宅で子育てをはじめた産後女性の心身の状態や、産後女性と家族が社会的に置かれる状況やそこで必要な認識や支援について伝えています。

 

 

また、今回は講義の後半の時間を使って、産後ケア教室で伝えている産後セルフケアを、助産師になるみなさんが実際に医療現場で伝えられるように、セルフケアの実習も行いました。

産院や助産院など、これまで数多くの実習にも行かれて学んでいる学生のみなさん。現場とリアルを知っているからこそ、その場で学んだことをどう伝えたらいいのか、工夫もできるし上手に寄り添うこともできるし、現場で活かす気持ちがあるからこそ、熱心にメモを取りながら取り組んでくださいました。

 

 

講義の最後の学びの振り返りシェアで、学生のみなさんからこんな声をいただきました。

●講義で印象的だったのは、「産後を夫婦だけで乗り切ることがベストでは、ない」ということ。

●教室に参加してから、バランスボールを買ってはじめてみたら、体調がとてもよかった。産後ケア教室への参加はセルフケアのきっかけにもなると、今日の講義であらためてわかった。

●印象的だったのが、本当に困っている時は、「助けて」が言いづらいという話。だからこそ、待っていないで、こちらから声をかけていくことが大切だとわかった。

●40%以上の産後女性が産後うつに近い状態にあることに驚いた。今日実習で学んだセルフケアも、直接妊産婦さんに伝えていきたい。

 

学生のみなさんは、産院や助産院などで多くの実習経験も積み、国家試験を受験して、晴れて助産師となれるのだそうです。

母と赤ちゃんの命を預かる責任とプレッシャーもかかる仕事です。

そんなことを感じながら、産後ケア教室に実習に来ていただいた際、教室後の振り返りで、「なぜ助産師をめざしたのか、よかったら教えてください」とお願いしました。

すると、学生のみなさん一人ひとりが、助産師をめざすきっかけや原体験を自分の言葉で語ってくれました。

 


(学生のみなさんのこのやさしい表情、やっぱり赤ちゃんが大好きなんですね!)

きっかけも原体験も、誰一人として同じ人はなく、その人のオリジナルのもの。
それは、助産師になってからやこの先の人生で、思うようにいかず悩んだり、立ち止まってしまった時に思い出して、自分を支えたり奮い立たせてくれる指針や、“ お守り”になるのでは…?そう思います。

私にも、今の仕事をしている原体験があります。

それを他者に問われて語り、じっくり聞いてもらったことがあります。

「だから私はこの仕事を、この役割を担っているんだ」、そんな風に言語化して自覚できていれば、つまづいても、立ち止まっても、その原体験や指針を思い出して、またきっと前に進んでいけるんだと思います。

 

誰もが安心安全に妊娠・出産・産後を経験できるように。

新たな家族を迎える子育ての導入期を、自分一人やカップルだけで頑張るのではなく、他者を信頼して委ね、感謝する経験をして、それを次の家族や世代に循環して、支え合える関係性や地域社会を育んでいけるように。

立場や役割は違っても、そのおもいと願いは一緒なんだと思います。

これからも教室だけでなく、産後・子育て支援に携わるさまざまなステークホルダーのみなさんへの産後ケアの啓発や、ネットワークづくりに取り組んでいきます。

天使大学大学院の学生のみなさん、先生、そして実習生受け入れを快く了承してくださった産後ケア教室参加者のみなさん、ありがとうございました。

 

  • この記事を書いた人

永野間かおり

認定NPO法人マドレボニータ産後セルフケアインストラクター。「産後のピンチを『チャンス』に変える」を軸に、産後ケア札幌教室と、産後セルフケアオンライン教室(全国)を開催。自治体/保健師・助産師など専門家向け講座の講師も務め、述べ受講者数は2,800名を超える。札幌在住、1978年生まれ、小中高生3男子の母。

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